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最高裁判所第二小法廷 昭和27年(オ)1258号 判決 1954年2月26日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士高橋修一の上告理由について。

原判決の確定した事実によると、戸主津森四郎二郎は昭和二〇年二月二日法定及び指定の家督相続人なくして死亡したので、同人の母の妹橋本ミツの夫橋本徳治郎が大阪区裁判所に家督相続人選定のための親族会の招集を申請し、同裁判所は津村彦三、橋本ミツ及び上告人を親族会員に選定し、昭和二一年二月一八日午前一〇時山口県阿武郡徳佐村領家二七三八番地橋本実結方に親族会を招集する旨の決定をした。ところが同年二月一五日大阪区裁判所は同年二月一八日午前一〇時の前示親族会招集期日を同年三月二〇日午前一〇時と変更する旨の決定をして同日郵便送達により右決定を告示した。そして右変更決定の謄本は上告人に対しては同年二月一七、八日頃送達されたが、津村彦三、橋本ミツの両名に対しては同年二月一八日以前には送達されなかつたので、右両名は同日、招集場所である橋本実結方に参集し、上告人は参集しなかつたため、津村彦三、橋本ミツの両名で親族会を開き両名一致で被上告人を亡津森四郎二郎の家督相続人に選定する旨の決議をしたというのである。そして右の如く親族会招集期日変更決定が三名の親族会員の一人にのみ送達され、他の二名の会員には招集期日前に送達されなかつたため右期日に前者が欠席し後者のみで決議を成立させた場合には、親族会招集の手続には違法の点はあるが、その決議は当然無効のものではなく、不服の訴によつて無効の宣言を受くべきものであると解するを相当とする。然らば右と同一趣旨に出でた原判決は正当であり、論旨は理由がない。

よつて民訴四〇一条、九五条、八九条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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